物を申せ

 先日も、あるご婦人が「○○先生は、仏教婦人会の会員は『仏婦ハンドブック』だけ読んで、他の本を読んではいけないといわれましたが、そういうものでしょうか」と尋ねられるのです。

 そこで私は、「納得できないのなら、その場で『先生、どうして他の本を読んではいけないのでしょうか』と尋ねなかったのですか」と申したのです。

 直接、先生にお尋ねしにくかったら、いっしょにその話をきいた者同志で、「先生がああいわれた、あそこのところをあなたはどう聞かれましたか」と話し合われたらよかったのです。

 そうすれば、「先生のあの言葉は、こういう意味でいわれたのではないですか」というお仲間の受け取り方も聞かれて、「ああ、そういう意味だったのですか」ということになって、いつまでも、「あの先生のあの言葉がおかしい、おかしい」というようなことにはならないのです。

 私も、お尋ねのご婦人の言葉を聞きながら、みんなで勉強しましょうという『仏婦ハンドブック』は読まずに、あの本にはこう書いてあった、この本にはこう書いてあったという人が多いので、先ず、仏教婦人会の会員は『仏婦ハンドブック』を、と言われたのではないかと思います。

 蓮如上人は、「物をいへ物をいへと仰せられ候。信不信ともにただ物をいへと仰せられ候。物を申せば心底もきこえ、又人にもなをさるるなり。ただ物を申せ」といわれました。

 黙っていると自分の聞き違いなり、理解不足を直してもらうことができません。物をいって、自分の意見をいい張るのでなく、みんなに直してもらうことが、何よりも大切です。