百八つの言葉(二) 著作 藤田 徹文

 

4.安全

 安全とは「やすらかで、あぶなくないこと」です。この安全はいろいろな言葉と一つにして使われます。身近なところでは、「安全かみそり」、皮膚を傷つけないで剃れるように工夫された西洋かみそりのことです。

 「安全ピン」、長方形に曲げて、針の先端を覆うようにした留め針です。

また、安全地帯、安全弁と安全という言葉は、あちらこちらに出てきます。さらに言いますと、国際平和と国家の防衛に関する個別的または集団的な条約を、安全保障条約と言いますし、国際平和と安全の維持を主な目的とする国連の主要機関を安全保障理事会と言います。身の周りから世界のことまでに安全という言葉が使われるのは、逆に言うと、身の周りにも世界にも危険がいっぱいあるということでしょう。

 仏教では、教えをよく理解し、悪を遠ざけ善に仕える生活こそが、真の安全であると説きます。

 

5.一生

 「一生」とは、生まれて死ぬまでのことですが、その生まれてから死を迎えるまでの間の在り方は、千人いれば千通り、万人いれば万通りあり、文字通り千差万別です。 たとえば経済のことについて言えば、生涯お金の苦労なしに終わる人もいるでしょうし、反対に、一生お金に泣かされっぱなしという人もいるでしょう。経済的に恵まれた環境にあっても、事業に失敗して、お金に追われて生きる人もいれば、恵まれない環境から大成功して、お金に埋まって暮らす人もいるでしょう。人生いろいろです。

 

    他人の目と自分

本願寺八代目の蓮如上人は

 「夫、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、おおよそはかなきものは、この世の始中終、まぼろしのごとくなる一期なり。されば、いまだ萬歳の人身を受けたりという事をきかず、一生すぎやすし」

                         『御文章』

と言われています。

 すぎやすい一生をどう生きるのか、ただ、お金だけが人生ではありません。

6.維持

 「維持」とはもちこたえることであり、たもち続けることです。無常の世にあって仏を信じ、道を求め続ける心は大切ですが、維持できない心の状態を、「経典」は次のように説いています。

 「信はこのように尊く、まことに道のもとであり功徳の母であるがそれにもかかわらず、この信が道を求める人にも円満に得られないのは、次の五つの疑いが妨げになるからである。

一つには、仏の智慧を疑うこと

二つには、教えの道理に惑うこと

三つには、教えを説く人に疑いをもつこと

四つには、求道の道にしばしば迷いを生ずること

五つには、同じく道を求める人々に対して慢心から相手を疑って、いらだつ思いがあるためである。

 まことに世に疑いほど恐ろしいものはない。疑いは隔てる心であり、仲を裂く毒であり、互いの生命を損なう刃であり、互いの心を苦しめる棘である」

 

 

百八つの言葉(二) 著作 藤田 徹文

 

4.安全

 安全とは「やすらかで、あぶなくないこと」です。この安全はいろいろな言葉と一つにして使われます。身近なところでは、「安全かみそり」、皮膚を傷つけないで剃れるように工夫された西洋かみそりのことです。

 「安全ピン」、長方形に曲げて、針の先端を覆うようにした留め針です。

また、安全地帯、安全弁と安全という言葉は、あちらこちらに出てきます。さらに言いますと、国際平和と国家の防衛に関する個別的または集団的な条約を、安全保障条約と言いますし、国際平和と安全の維持を主な目的とする国連の主要機関を安全保障理事会と言います。身の周りから世界のことまでに安全という言葉が使われるのは、逆に言うと、身の周りにも世界にも危険がいっぱいあるということでしょう。

 仏教では、教えをよく理解し、悪を遠ざけ善に仕える生活こそが、真の安全であると説きます。

 

5.一生

 「一生」とは、生まれて死ぬまでのことですが、その生まれてから死を迎えるまでの間の在り方は、千人いれば千通り、万人いれば万通りあり、文字通り千差万別です。 たとえば経済のことについて言えば、生涯お金の苦労なしに終わる人もいるでしょうし、反対に、一生お金に泣かされっぱなしという人もいるでしょう。経済的に恵まれた環境にあっても、事業に失敗して、お金に追われて生きる人もいれば、恵まれない環境から大成功して、お金に埋まって暮らす人もいるでしょう。人生いろいろです。

 

    他人の目と自分

本願寺八代目の蓮如上人は

 「夫、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、おおよそはかなきものは、この世の始中終、まぼろしのごとくなる一期なり。されば、いまだ萬歳の人身を受けたりという事をきかず、一生すぎやすし」

                         『御文章』

と言われています。

 すぎやすい一生をどう生きるのか、ただ、お金だけが人生ではありません。

6.維持

 「維持」とはもちこたえることであり、たもち続けることです。無常の世にあって仏を信じ、道を求め続ける心は大切ですが、維持できない心の状態を、「経典」は次のように説いています。

 「信はこのように尊く、まことに道のもとであり功徳の母であるがそれにもかかわらず、この信が道を求める人にも円満に得られないのは、次の五つの疑いが妨げになるからである。

一つには、仏の智慧を疑うこと

二つには、教えの道理に惑うこと

三つには、教えを説く人に疑いをもつこと

四つには、求道の道にしばしば迷いを生ずること

五つには、同じく道を求める人々に対して慢心から相手を疑って、いらだつ思いがあるためである。

 まことに世に疑いほど恐ろしいものはない。疑いは隔てる心であり、仲を裂く毒であり、互いの生命を損なう刃であり、互いの心を苦しめる棘である」